ひたち野うしく小学校-木質図書館
ひたち野うしく小学校(茨城県)
平湯モデル採用、本の世界にいざなう。魅せる設計、曲線で構成された壁面展示の絵本棚
茨城県南部に位置する牛久市立ひたち野うしく小学校(同市ひたち野西)は 「平湯モデル」を全面的に取り入れた、全国的にみても珍しい公立小学校。 鉄筋コンクリート2階建ての校舎の内装は地元・茨城県産材の杉や栗の木で覆われ、 十分な耐震強度を保ちながら、温かさを感じさせる造りになっている。 1階児童昇降口を入ったところに図書館がある。広さは普通教室4教室分。 寺田和央教頭は「この広さは、関東一円はおろか全国を探してもないのではないか」と胸を張る。 確かに、広々とした入り口と木製引き戸で室内の様子を見渡せる図書館は、 子どもたちに「入ってみたい」と思わせる魅力を持っている。
中に入ると、その広さを生かした「本を魅せる」設計の工夫が目につく。正面右にはカウンター。 緩やかに湾曲したカウンターは、背が低い子どもに合わせて低くなっている。 正面奥には木製のテーブルが置かれ、司書が季節に応じて本のディスプレーを工夫する。 左側には本の表紙が並べられ、まるで店のディスプレー棚のようだ。 入室してきた子どもを「一瞬で本の世界にいざなう」工夫が、平湯モデルにはある。 同モデルの図書館の特徴の一つとして、柔らかな曲線で構成された壁面展示型絵本棚が挙げられる。 同小学校でも窓際の一角に絵本棚を配し、床にはカーペットを敷いている。 子どもたちを床に座らせ、担任が絵本の読み聞かせを行う。休み時間にはカーペットに座ったり、 寝転がったりしながらリラックスした時間の中で読書の喜びに浸ることができる。
入り口から奥のコーナーには、2クラス80人分の机・いすが配置されている。 主として、本を使っての調べ学習ができるスペースだ。教科・テーマ別に並べられた本を使って 課題のリポートをまとめたり、プレゼンテーションの資料を作成したり、 「学習・情報センター」としての図書館の機能をまとめている。 特筆すべきなのは、見ためが温かい木質化された図書館の装いの中、 最新の情報システムを子どもたちが利用できることだ。無線LANの整備、 図書館の隣のコンピューター教室とのアクセスの利便性など、情報活用のための配慮が行き届いている。 同小学校では、図書館だけでなく、児童の目線に立った使いやすい設計の工夫が随所にある 。吹き抜けの広い玄関ホールと教室まで続く広い廊下は、誰にでも優しいバリアフリーの設計だ。 各階を結ぶ階段にも工夫がある。鉄筋で強度を確保した階段の手すりには木質パネルを配し、 見ための木の質感を演出する。手すりは高低2段階を用意し、子どもたちの成長に合わせた安全のための配慮がなされている。
各教室の前には、廊下を通常の3倍にした多目的スペースを確保。グループワークや壁新聞の作製作業など、多様な学習活動に生かされる。 同小学校のコンセプトは「学校を地域の中核施設として位置づける」。 半円形ドーム型200人収容の音楽ホールは、音楽教室として使われるだけでなく、 土日曜ともなれば地域の音楽楽団などに開放され、イベントなども催される。 また、家庭科教室や木工教室は自治体のサークル活動にも利用される。 それらの活動を支えるのが「NPO法人組織」だ。学校施設を子どもたちの教育のためだけでなく、 地域活動の拠点施設として、さまざまな形で活用していく。 そして、地域の人的資源を活用しながら子どもたちを育てていく環境をつくる。 明確なコンセプトのもと、同小学校は学校という枠を越え、地域のブランド化のための重要な施設となっている。 平湯モデルを公立学校図書館の設計に取り入れた理由を尋ねたところ、 当時の市の担当者が学校建設にあたり全国の学校図書館をリサーチし、 インターネット上で平湯モデルにたどり着き、これだと思って監修を依頼したそうだ。 担当者の子どもたちへの熱い思いが、素晴らしい学校図書館を牛久市にもたらすことになった原点ではないだろうか。
広々とした図書館。机やいすも木質で、児童はくつろいで本を読むことができる。 外から中の様子がうかがえ、児童が図書館に入りやすい雰囲気をつくっている 。
<2013年3月 奈良日日新聞より>

←前へ戻る