2014-11-21 学校図書館木質・活性化支援センター 座談会

 子どもたちが木のぬくもりの中で本に親しめる学校図書館を作ろうと、NPO法人学校図書館木質・活性化支援センター (藤井フミ子理事長)が発足して2年目を迎えた。新たな理事も加わり、1年目の経験を踏まえて今後の活動展開や 目標について語り合っっていただいた。(聞き手は藤山純一・奈良日日新聞社代表取締役)

 ―NPO法人学校図書館木質・活性化支援センターが発足して1年になりました。この1年の活動を振り返っていただき、 改めて同法人の意義についてお聞かせください。
【藤井】:産材のブックスタンドを寄贈したことで、木質化された図書館が子どもたちにとって 「来たい」と思える場になりつつあります。 またイオンモールで行った「温(ぬく)もりの絵本体験」により、 読書の楽しさや有効性を多くの人にアピールすることができました。 読書環境の改善により子どもたちの読書活動が活発化し、言語力が向上しますし、 県産材の有効活用と森林産業の活性化への貢献も果たせます。 木質化と活性化を合体させたところに法人の意味があると思います。

【荒木】:私が勤める奈良市立あやめ池小学校にもブックスタンドを寄贈していただきました。 木目を生かし、香り漂うスタンドが加わったことで、子どもたちの読書意欲がさらに高まったことと思います。 さらに面展台の生産元の十津川村「ふるさと復興協力隊」の方からお話を聞くことができました。 自然災害から復興への努力や、ものづくりへの意欲、伝えられてきたものを伝えていきたいという熱い思い、 まさにESD(持続可能な発展のための教育)への端緒となったと思います。 県下にこのような学校が増えていると推察しますし、法人の活動の大きな意義であったと捉えています。

【松川】:子ども、保護者、教師、学校を取り巻くさまざまな現代的教育課題に対して「読書」の面 、とりわけ学校図書館教育に着目して、力になりたいという、趣旨の具現化に向けて誠実に活動し 、着実に足跡を残していきたいと思います。

【河瀬】:書館が変われば教育が変わり、人や未来が変わります。法人の意義はそうしたところにあると考えます。

【白須】:学校図書館、県産材がつながることは、とても意義のあることだと思います。

【出口】:子どもの学力と読書における問題が指摘され、読書量が多いほど学力が高い傾向にあると言われています。 そうした中で、子どもたちが本と触れ合える場である図書室の環境改善が大きいと考えます。 学校図書室の木質化による環境改善は図書室を中心に、子どもたちに読書への関心を持ってもらうひとつのきっかけになったと思っています。

【甲村】:学校により、図書館木質化に取り組む姿勢が異なっていると思います。まずは多くの学校に、 木質化の必要性をPRすることが重要だと考えます。

【山本】:私は理事になって日が浅く、これから積極的に参画させていただきたいと思っていますが、 事業報告を拝見する限り、大変有意義なことをしていただいていると思います。

【巽】:学校図書館活動を熱心に取り組んでいる学校と、あまり取り組みが進んでいない学校があると思います。 司書教諭が配置されている学校でも、専任教諭の配置でないため学校図書館活動や指導に 十分に生かされていないというのが現状ではないかと思います。 また、学校図書館活動を活性化するためにどう取り組みを進めれば良いか悩んでいる学校もあると思います。 そうした学校を支援していくことも、大切ではないかと考えます。

   ―子どもたちを取り巻く環境はますます悪化しています。一方、地場産業の林業の現状もまだまだ厳しい状況が続いています。 それぞれのお立場からこれらの現状認識についてお聞かせください。

【藤井】:IT化が進み、良し悪しに関係なく子どもの生活に入り込んでいます。 そのことによって物事をじっくり深く系統的に考える力が低下し、規範意識も低下しています。 子どもたちを取り巻く生活環境の改善に、社会全体が取り組む必要があると思います。 高度情報化する知識基盤社会を生き抜くために果たす読書の効果は、たいへん大きいものです。 子どもたちの身近にある学校図書館を活用し、子どもたち自身が読む楽しみや学ぶ楽しみを実感しつつ、 思考力や想像力、判断力や表現力を鍛え、生きる力を身につけられるよう応援していきたいと思います。 学習の場となる学校図書館に県産材が生かされ、県の林業の活性につながればうれしいです。

【荒木】:自分たちの身の回りとは異なる環境を知り、そこにある課題を見つけ、自分にできる解決方法について思い巡らせる。 そして実行に移していく、という学習過程を踏まえた学びの場の設定、つまりESDの創造が必要であり、 そうした授業づくりを進めていくことが大切だと考えます。

【松川】:生きとし生けるものはどんなものでもつながり、関わり合いながら「いのち」の営みをしています。 そのことを認識する上で、学校図書館を木質化することは意味があります。「1本」の木から多くのことを学ぶことができるからです。 「木」には正答のない課題に対して、多様な観点から果敢にアプローチする資質と能力を伸ばしてくれる力があるように思います。 そのように捉えると、「子どもを取り巻く環境」と「地場産業の林業の現状」とはそれぞれ別個のものではなく、 つながっていることがわかってきます。そのことはESDの理念と結びつくのではないかと思います。

【河瀬】:地元の幼稚園や小学校、中学校の図書館に出入りする機会は頻繁にありますが、 その環境は数十年前と比べて良くなったとは言い難いです。相変わらず生徒数に対して狭く、古く、ワクワクするような場所ではありません。 先生や保護者、地域のボランティアの努力で少しずつ良くはなってきていますが、 残念ながら役員が代わると元の状況に戻ってしまうというのが現状です。 国、県、市の予算が大幅に削られる中、一個人の努力には限界があります。法人の力を結束して公共だけではできないこと、 個人だけではできないことを推し進めていかなければならないと強く思います。

【白須】:県の木材協同組合や森林組合、製材会社、学校図書館協議会が手を組み生まれた法人ですが 、県産材の現状を知らなかった私は、この結びつきに感動しています。

【出口】:地場産業が低迷すると、地域が衰弱すると考えます。地場産業の活用が、地域活性のひとつの要因と思われます。 子どもたちの環境から言えば、スマートフォンなどの長時間利用で学習意欲の低下やいじめ、 悪質なサイトにより犯罪に巻き込まれるなど、厳しい状況が続いています。 図書室の木質化を推進することで、地場産業である林業の活用と読書の楽しさを伝え、少しでも現状改善が行えればと思います。

【甲村】:学校教育再生のためにも、全ての子どもたちが平等で均等な教育を受けることができると共に、 親の意識改革が必要でしょう。 また小学校の教科書では林業について、たった2nしか掲載されていないという話を聞いたことがあります。 社会科の授業にも、日本の木材・森林についての記述をもっと多くする必要があると考えます。 地場産業の木材について幼い頃より親しみを持つことで、成長すると木の家に自然と住みたくなると思います。

【山本】:林業界は厳しい状況であることに変わりありませんが、次年度にバイオマス発電がスタートすることなど、少し明るい材料も散見されます。 都会の人は年々、森林が減っていくという認識を持っていると思います。しかし実際には、 適度に伐採して使用することで木が生きてきます。そうした認識の違いについても呼び掛けていかなくてはならないと思っています。 巽:県産材を校舎の内装などにもっと取り入れていただき、児童や生徒に木の良さが理解されるような校舎建築を推進していくことも大事であると考えます。
そのためにも図書館活動を含む学習活動の中で林業など、県の産業について考えさせる取り組みも必要ではないでしょうか。


 ―このような現状を踏まえて同法人は2年目のスタートを切りました。さらなる飛躍を目指してどのような活動をしていくのか、 具体的な取り組みや意気込みをお聞かせください。

【藤井】:会員の増強はもちろん、学校現場へブックスタンドの寄贈を継続すると共に機会を捉えて県外も含め、 県産材の良さをアピールし実感してもらいたいと考えます。 学校現場や行政機関を訪問し、図書館研究団体やPTA団体とも連携して図書館教育や読書指導についての関心を高めてもらい、 学校図書館の環境改善や活用が進展するよう働きかけたいと思います。

【荒木】:国立国会図書館が全国の図書館などと共同で構築している調べもののための検索サービス、 「レファレンス協同データベース事業」の参加対象に、新たに学校図書館および学校図書館関係団体が加わったとのことです。 収集資料が充実し、子どもたちの学びの幅が広がっていくものと思います。

【松川】:当面の課題は、学校や地域から揺るぎない信頼を得るための基礎づくりにあると思います。そのためには、 常に子ども・保護者・教師・学校の側に寄り添いながら、「ともに」の精神で活動を「見える化」していくことが大切だと思います。 もう一つは、拠点校(モデル校)を開発し、支援することであると思います。「木質化・活性化」は「・」(中黒)でつながっています。 「・」は、本法人の理念の象徴的記号です。それは、木質化から活性化を、活性化から木質化を表しています。そして、 そのことを具体的に取り組んでいる学校があると、本法人の存在感と説得力がさらに増すと思います。

【河瀬】:少しずつ会員を増やしていくためにも、あらゆる機会を捉えた広報活動や、昨年度イオンモールで行ったようなイベントを展開することが大事だと考えます。 私としては今まで以上に草の根的な活動を続けていきたいと思います。

【白須】:法人として、今年度は図書館の内装木質化に取り組もうとしている奈良教育大学付属中学校を支援することになりました。 これをひとつの足がかりに、県内の小中学校の学校図書館木質化推進を目指しますが、市町村立の学校では予算が必要なだけに大変な事業です。 そこで法人の活動や思いを、市町村や教育委員会の方に理解をしていただくことが必要だと考えます。

【出口】:保護者へ読書の重要性について、より一層の理解を求め、法人の活動を広める必要があります。 学校、保護者、PTAなどへ法人の啓発活動を強化し、認知度を上げて活動を支援していただける方々との、今以上の活動強化ができればと考えます。

【甲村】:県内または市町村の教育行政機関と協力して木質化のモデル校をつくりPRをすればと考えます。

【山本】:小さい頃から木に接する機会を、もっと増やすことが必要だと思います。小学校だけでなく、 幼稚園や保育所の遊具などに木質のものを採用していただけるよう働きかける必要があると思います。 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」ができたことで、県をはじめ各市町村も協力すると宣言していますので 、低層公共施設の木造化と木質化の推進を木の良さと共にPRする必要があると考えます。

【巽】:各学校が抱えている悩みや問題点に応えていけるような組織づくりを法人としても考えていく必要があると思います。 学校の図書館活動をより活性化させるための支援のあり方を伝え、悩みや課題など現場の要望を受け入れる窓口も合わせて設置する必要があると考えます。

 ―子どもたちが生き生きと成長し、地域社会が活性化することが望まれますが、それぞれのお立場で将来目指すべき社会について、 家庭や学校、地域社会のあり方についてお聞かせください。

【藤井】:いつの時代も人権を大切に、生きている価値が見出される社会であってほしいです。 学校については、子どもたちが元気に登校し、喜々と学習する場であることを目指します。そして学校教育を良くするために 、関わる人全てが互いに尊敬し、信頼し合って自己の責任を果たす努力をしてこそ、より良い学校や教育環境を作ることができると考えます。

【荒木】:私は「不語実践」を信条として勤めています。多くを語らず「不語」の姿勢で、自分のできることを精一杯に務める。 それを私は不語実践と呼び、熟考し、実際に自分で行うよう心がけています。そうするうちに、 「何かお手伝いすることはありませんか」と声をかけてくださる方も出てきます。 結果、目的を同じにしたり、解決に向けて検討したりしながら自己実現可能な社会に向かって協力していくことができます。 そのためには、「社会」というものは、いま何が課題であり、求めるべきゴールはどこかが明確であるべきだと考えます。

【松川】:「(広義の)読書」を基盤とした、ひとづくり、まちづくりを推進することが大切であると思います。 未来を創るひとは、よく「聞く」「読む」、そして「表す(話し、話し合う)」ひとであることが望ましいと思います。 「読書するまち(学校・地域)」は、「21世紀型まち(学校・地域)」として、老若男女を問わず、誰もが人間性を豊かに育み 、誰もが生きがいのもてる「まち(学校・地域)」として、伸びていくであろうと思います。

【河瀬】:全ての学校図書館に司書がいて本が豊富にあり、木の香りがする温かで居心地の良い環境が理想です。核として子どもたちやPTA、 地域の人たちが交わることで地域力を高め、豊かな人間教育と社会教育が行われることが望ましいと思います。 今の私にできることは、地道に学校や園で子どもたちと絵本や昔話を楽しみ、人と人との関係を築いていくことです。 子どもたちだけでなく、私のような地域のボランティアにとっても成長の機会であり学びの機会であると思います。

【白須】:子どもたちの本離れが叫ばれますが、周りの大人たちのちょっとした取り組みで子どもは本に興味を示します。 私は今、奈良市内の保育園に週に一度、絵本の読み聞かせに行っていますが、保育園に行くと子どもたちが「絵本の先生だ」と走り寄って来るんです。 子どもたちは読み聞かせる約30分の間、身動きもせず本に集中しています。そうした子どもはやがて、自分から本を読み始めるようになるでしょう。

【出口】:子どもたちの問題が発生する理由としてコミュニケーション不足というケースが多く、普段から親子や保護者同士、学校と保護者 、学校と地域とがコミュニケーションを深め、連携を活性化する必要があると思います。 学校を中心とした地域コミュニティーの構築、地域コミュニティーを活用した地域と家庭をつなぐ活動を行い、 「地域で子どもを守り育てる」活動が必要に考えます。

【甲村】:県や市町村の教育機関と連携して、図書館木質化のモデル校を作りPRし浸透させれば、意識改革ができるのではないでしょうか。

【山本】:家庭や学校が存続し、地域社会を活性化させるための基本は、その地域の資源を有効活用して地場産業の振興を図ることです。 県の約70%が森林ですから、その資源活用が第一と考えられます。 産物の一つとしての木材は、再生可能な資源であるにもかかわらず、残念ながら現在は業としてその持続可能な体制に赤信号が出ています。 森林地帯の地域社会だけでは青信号に変える力は乏しいです。 森林の公益的機能をもっとPRし、水源税や環境税を財源とする森林交付税の仕組みを確立するなどして、 国民すべての力によって再生し持続可能な体制と地域社会を確立する必要があると考えています。

【巽】:子どもたちが自分の希望や夢に向かって生き生きと、安心して生活できる社会を創っていかなくてはなりません。 そのためには家庭や地域、学校や行政が一体となって犯罪のない明るい社会にしていくべきです。 子どもたちに学校図書館教育を通して、情操面の教育、心の教育の充実を図っていくような指導が必要だと思います。 法人として何ができるか、何をしていかなくてはならないかを考えて活動していく必要があります。

   ―ありがとうございました。

<2014年11月 奈良日日新聞より>

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